リン酸鉄リチウムバッテリーと三元系バッテリーをわかりやすく比較!

リン酸鉄リチウムバッテリーと三元系バッテリーをわかりやすく比較!

 近年、市場に出回っているポータブル電源のほとんどは、リン酸鉄リチウム電池か三元系リチウム電池のどちらかを搭載しています。リン酸鉄リチウム電池の優れた点が多く謳われているため、多くの人がリン酸鉄リチウム電池こそが最適な選択だと考えています。しかし、本当にそうなのでしょうか? 今日はリン酸鉄リチウム電池と三元系リチウムイオン電池のメリットとデメリットを徹底的に比較していきましょう。

エネルギー密度の違い——重量と寿命について

 よく知られているように、リン酸鉄リチウムバッテリーのエネルギー密度は三元系リチウムイオンバッテリーより低いため、安定性が高い、充放電サイクルの回数が多いとされ電池の寿命が長いものとなります。しかし、エネルギー密度が低いということは、体積が大きく、重量が重いことを意味するため、携帯性の観点から考えると、リン酸鉄リチウムイオン電池はあまり使いやすくないということになります。その一方で、三元系リチウムイオン電池は、エネルギー密度が高く、出力が安定しているため、バッテリーの重さが軽減され持ち運びやすくなります。

耐寒性について

 リン酸鉄リチウム電池の最低放電温度は零下20°Cと言われていますが、実際には低温性能は三元系リチウムイオン電池より劣っています。低温環境下でのリン酸鉄リチウム電池の電力損失は、三元リチウムイオン電池よりも速いのです。(-20°Cでは、リン酸鉄リチウムイオン電池は最大60%の電力を保てるのに対し、三元系リチウムイオン電池は70%以上保てる。ここでは保存温度を指します。三元系バッテリーの放電温度は-10°C以上が必要です。)
 したがって、この2種類電池について、零度以下での保存や使用は推奨しません。

耐熱性について

 よくご存知のとおり、リン酸鉄リチウム電池の熱分解温度は700°Cと高く、三元系リチウム電池では200°Cで熱分解が起こります。一見すると、リン酸鉄リチウム電池のほうが安全性においては高いように見えます。しかし、これは電池そのものの特性からの判断に過ぎません。実際には、ポータブル電源の安全性を判断するには、より複雑な要因をご考慮いただく必要がございます。
 実際、ポータブル電源の電池パックの設計は、200°Cといった高温になること自体を防ぐことができます。夏の暑い環境下でも、電池パックの温度は60°C以内に制御されます。熱管理システムが故障した場合でも、デザイン上、200°C到達を防ぐことができます。
 では、異常事態の例外として、火災が起きた場合を考えましょう。一般的な建物に火災が発生後、7〜8分で1100〜1200°Cに達するとのことです。つまり電池の熱分解温度が700°Cか200°Cかは、意味がないということになります。
 しかし、稀に電池が発火するケースもございます。ほとんどの場合、外的衝撃を受けていると伺っております。リチウムイオン電池の安全性において、正極と負極が短絡のリスクは高温のリスクより大きいです。リン酸鉄リチウムイオンバッテリー、三元系リチウムイオンバッテリーを問わず、電池を覆っているアルミフィルムが破損すれば、短絡の危険性が生じます。
 要するに、ポータブル電源の安全性を決めるのは、本体の全体的な設計そのものであり、正極材料の属性のみで安全性を決めることはできません。

コストの違い

 両者の正極材料が異なるため、コストにかなりの差が生じます。多くの企業がリン酸鉄リチウムを「新しい」ものとして高コストだと謳っていますが、実際には三元系電池の正極材料に必要なコバルトの価格が高止まりしているうえ、正極材料の製造工程が複雑なため、三元系のほうが電池コストは高くなります。

 では、なぜ現在市場に出回っている三元系ポータブル電源は、通常、リン酸鉄リチウム系のポータブル電源よりも安価なのでしょうか。これは市場の需要によって決定されます。現在、多くの人がリン酸鉄リチウム電池の方が優れていると考えているため、リン酸鉄リチウム電池の価格は自然と高騰しているのです。